(房日新聞2010.6.18付)
館山市長選、石神氏が出馬を正式表明
「市民主体の市政」掲げ
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今年11月の館山市長選挙に出馬の意思を固めた同市出身で東京・中野区前副区長の石神正義氏(61)が16日、記者会見して正式に立候補表明した。石神氏はこの中で、「市政は市民の幸せを実現するためのツール(道具)であり、市政の実現すべき目標は市民が主体的に描かなけらばならないと」としたうえで、「①協働②連携③しくみづくり、の3つの理念をもとに市民と意見交換しながら戦略シナリオづくりに取り組みたい」と立候補に向けた決意を語った。
館山市と中野区は、里・まち連携事業をとおして以前から交流。こうした事業に関わるなかで、市政の現状を憂う市民グループなどから再三の要請を受け、「長い行政経験を活かして課題を解決していけば館山の立て直しはできる」と5月中旬ごろに出馬を決断した。
同区で都市計画(まちづくり)や財政などに長く携わってきた。その経験則をもとに「自治は市民が主役であり、行政は道具に徹した住民自治を標榜。さらに、施策の評価を市民から受ける」と持論を展開。
取り組むべき課題として、▽医療▽財政▽観光▽雇用をあげ、これらの課題解決には、「市の成長戦略とそれを支えることのできる教育、福祉や安全安心など幅広い社会の持続可能性の議論が欠かせない」とした。
先ごろ立ち上がった市民グループの「『立て直そう!館山』全市民の会」(愛沢伸雄・代表世話人)の「筆頭立て直し人」として、同グループを核に幅広い支援を求めていきたいとしている。
これにより、市長選は前日の市議会で出馬表明した現職と同氏の一騎打ちが確定的となり、市民の関心も一気に高まってくるものとみられる。
◎講演抄録(房日新聞2010.6.16付)
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心の過疎をつくらないまちづくり
-新たな公とは何か-
--住民参画の仕組みを導入--
矢野学氏(新潟県上越市議・旧安塚町長)
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雪国の安塚の取り組みを紹介する。合併して21万人の上越市になったが、安塚地区は3300人の中山間地。私は平成17年の合併時の町長だった。合併で「必ず行政サービスは落ちる」と思った。自分たちが元気を出して自前の地域、特色と活力ある地域をつくろうと腐心した。
そのために自分たちでお金も責任も行動もしようと。その仕組みとして「NPO法人・雪のふるさと安塚」という自治組織をつくった。これが「新しい公共」として全国で紹介されることになった。
雪を使った町おこし。また景観をきちっと考えようと、公共施設は木造にしている。ごみの集積所も。行政だけでなく、市民の力もある。花いっぱい運動にも取り組んだ。オリジナルの花をと、ヤナギバヒマワリが全町で100万本咲き誇る。今200万本を目指している。
財団をつくって、雪を利用する研究をした。雪室をつくり夏の冷房に使っている。コメの貯蔵、農産物の保存にも使う。福祉の施設や中学校も雪冷房している。雪1㌧で二酸化炭素30㌔を削減し、石油10㍑を節約できる。雪は邪魔者ではなく、資源になった。現在、世界一の雪の保存量があるのが安塚という地域だ。
棚田の町を売り出そうと、子どもの田舎体験事業に取り組んだ。特徴は民泊ができること。世帯数の2・5割が経験している。今は1億円の産業になった。
新たな自治組織(NPO)には1人年2000円の会費で、世帯数の8割にあたる1167人が加入した。分科会に分かれ、地域をどうするかを考える。最初の理事長は女性。上越市から4000万円の委託を受け、施設の管理も行う。独居老人の見守り、有償ボランティアも引き受ける。
上越市は「協同のまちづくり」の目的で各地域に自治区を制定。地域の意見を取りまとめる「地域協議会」も設けた。各区10-20人の委員は選挙で選び、無報酬。地域をどうするかを考え、市から委託を受けたものを審議する。年2億円の活動資金が市から自治区に配分される。安塚地区には約600万円。何に使うかは協議会で話し合って決める。
館山は合併はなかったが、合併しようとしまいと、新しい公共になるにはどうするか。市民の皆さんの意見をどういう風に行政が聞いて、トップの市長が皆さんに回答し、あるいは意見を求める。そういう仕組みをどうつくるかというのが、自治体の元気のあるかないかで差がつく。
今どちらかというと、館山市はたたずんでいるのではないかと思う。それは、仕組みをつくっていないから。行政に元気がないのか、市民の皆さんにアイデアがないからたたずんでいるのか。
私のように3000の人口でしかないところが、いま交流人口がゼロから50万人になった。雪を売って、町を花でいっぱいにし、棚田でいろいろな子供たちが来て体験をし、ある時には涙を流して帰る。
私どもは、まだ未知のものだが、目指すべき公共、市民のみなさんと情報を共有し、市民の参画を得よう、皆さんからもらった税金を自由に使うために考えていこう、このようなことをたたずまないで前に進もうと、新しい仕組みをつくって実践中だ。
その中で安塚は特にコミュニティがしっかりしているから、経済活動もコミュニティビジネスも生まれてきて、自分たちが自信を持つ自治体像を語れるのではないかと思う。一人一人が考え、実行することが大切だ。
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本稿は、12日に館山市の南総文化ホールで開かれた「まちづくりシンポジウム」のスピーチを要約したものです。
(房日新聞2010.6.16付)
金丸市長が立候補表明
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11月に行われる館山市長選挙に現職の金丸謙一氏(61)=同市那古=が15日、再選をめざして出馬する意思を明らかにした。この日開かれた6月市議会一般質問で、三澤智議員の質問に答えたもので、これまで取り組んできた諸施策に「すでに芽が出て花が咲き実を結んだものもあるが、ようやく芽が出たものもあり、これらの施策を育てていかなければならない責務を痛感している」としたうえで、「謹んで、館山市長選に出馬することを表明させていただきます」と決意を表明した。
金丸市長はこの中で、「市長就任以来、私の政治信条である『聞く・見る・動く』を実践するなかで、各種施策の種をまいてまいりました」としながら、「一方で、自省すべきは自省し、心新たに臨んでゆく覚悟である」とこれまでの市政運営を総括。自身の政治目標とする「日本でいちばん住みやすいまちづくりに全力を尽くしていきたい」と述べた。
そのうえで、重点施策として「首都圏からのアクセス向上を受けて、交流人口や移住定住増をはかり、観光振興による経済活性化をはかっていく」とし、「①元気な市民②元気な経済③元気な財政の3つの『元気』により、元気なふるさと館山の実現に向け、市民とスクラムを組んで、全力でその責務を果たしていきたい」と立候補の決意を語った。
金丸氏は、4年前の市長選に市議から鞍替えして立候補。3選をめざした現職と、保守勢力をバックにした会社役員の新人とによる三つ巴戦を制して初当選した。
同市長選では、現職と高校時代の同級生で、東京・中野区の前副区長の石神正義氏(61)の出馬が確実視されており、このまま一騎打ちの〝同級対決〟にもつれ込む公算が濃厚となっている。
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11月14日投開票の館山市長選に、東京都中野区で副区長を務めた石神正義氏(61)が出馬する意向を固めた。同氏に極めて近い関係筋によると、今週中にも記者会見を開き正式表明する。同選挙には1期目を終える金丸謙一市長の出馬が確実視されており、2人の一騎打ちとなる公算が高まっている。
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(読売2010.6.14)
11月7日告示、14日投票の館山市長選に、同市出身で東京都中野区副区長の石神正義氏(61)が13日、無所属で立候補する意向を読売新聞の取材に明らかにした。石神氏は「財政のわかる人に市長をやってほしいという市民の声が強く、長い行政経験が生かせればと思い、出馬を決めた」と語った。16日に記者会見し、正式に出馬表明する。
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泥田に恐る恐る入り、足を取られて悲鳴を上げる子、はしゃぐ子…。館山市で5月上旬、東京都中野区の子どもたちが田植えを体験した。
「子どもたちの声を聞くのは久しぶりだよ。いいもんだねえ」。受け入れ農家のお年寄りも表情がほころんだ。30分もしないうちに、子どもたちは泥んこになって、田植えを楽しんだ。
仲介したのは館山体験観光協議会(海老原斉会長)。館山市の海や里山を生かして、漁業や農業などの体験を希望する首都圏などの人たちに体験先を紹介している。地元の農海産物などを首都圏の各種催しの産直コーナーなどで販売もしている。
館山市と東京都中野区との交流は10年を超える。きっかけをつくったのは県立安房高校のOBたちだ。第19回卒業生で同じ3年5組で机を並べた仲間が十数年前に再会。そこで、中野区に住む1人から、館山市で電機工事会社を営む和泉俊明さん、純子さん夫妻(61)に相談が寄せられた。
「中野区の商店街活性化のために館山市の農産物や海産物を目玉に出来ないか」
和泉さんは館山体験観光協議会に協力を呼びかけた。中野区の商店街で、館山産び農海産物の直売が実現し、同区との交流事業に発展した。
●残留組の願い、徐々に浸透
和泉さん夫妻が子どものころは、高度成長の恩恵が地方にも及び、商店街にも活気があった。子どもの数も多かった。
1967年、安房高の19回卒業生は、その多くが古里を後にした。それぞれの思いを胸に、ある者は就職、ある者は進学のために首都圏に向かった。
いま、同市は小規模な農漁業と観光を除くと目ぼしい産業がない。人口は減り、高齢化も著しい。和泉さん夫妻らと同じ3年5組約50人のうち、館山市を含む南房総に残っているのは、十数人に過ぎない。
しかし、古里を元気にしたい、という和泉さんら地元残留組の願いや活動は、還暦を迎えてリタイヤ後の人生を考えるようになった。首都圏などに住む館山市出身者に、次第に浸透しつつあるようだ。
以前と比べて同窓会などの参加者が増えてきた。里帰りのついでに、和泉さんの店に立ち寄ってくれる人も。
「雑談ついでの情報交換が、思いがけない形で生きることもある」。和泉さんは手応えを感じている。
●活動きっかけ新たな出会い
中野区での和泉さんたちの活動を機に、館山と縁が生まれた人も。中野区の職員篠原文彦さん(55)は仲間と館山市に家を借り、数年前から農業を楽しんでいる。「畑は広くないが、都会暮らしなので、ぜいたくな気分になれる」。仲間を含め、全員東京で生まれ育ったが、篠原さんは退職後、館山で暮らすことを真剣に考えている。
数年前、館山市内で関係者が集まった際、館山体験観光協議会の海老原会長が言った。
「若い連中はみんな館山を出て行ってしまう。でもリタイアしたら帰ってきて欲しい」。地元に向けた一言だったが、それを聞いた篠原さんは「自分たちも役に立てるんだ」と感じたという。
館山市のNPO法人「安房文化遺産フォーラム」の愛沢伸雄代表は「団塊世代のエネルギーを古里再生に生かす好機だ」とみる。12日には市内で「まちづくりシンポジウム」がある。退職時期を迎えた団塊世代が、まちづくりにどうかかわるかが、テーマだ。
(福島五夫)
●6月12日(土)14時〜16時30分
●会場:南総文化ホール大ホール(館山市北条) 参加費:500円
「立て直そう!医療、立て直そう!財政、立て直そう!観光」をテーマに開催される、まちづくりシンポジウム。2部構成で、1部はまちづくりのオーソリティを迎えてのゲストスピーチで、石神正義さんと矢野学さんが登場する。石神さんは、館山市出身で中野区副区長。中野サンプラザの立て直しをはかった立役者としても知られ、立て直しの経験をふまえ「里・まち連携」を語る。もう一方の矢野さんは、数々のユニークなアイデアで活性化に取り組み全国から注目を浴びた新潟県の旧安塚町の前町長。2部は2氏のほかに大島博幸さん(館山病院総長)、平本紀久雄さん(水産学博士)、伊東万里子さん(人形劇団貝の火主宰)とによるパネル討論会。地域再生を学び、考える絶好のイベントだ。
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問い合せ先/NPO法人安房文化遺産フォーラム
TEL/0470・22・8271
(房日新聞2010.6.8付)
文化遺産フォーラムが部門賞
まちづくり教育に高い評価
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地域の歴史・文化財の保存・活用を通じたまちづくりに取り組んでいる館山市のNPO法人安房文化遺産フォーラムの活動が、第8回日本都市計画家協会賞の「まちづくり教育部門賞」を受賞することになった。
19日に東京で行なわれる同協会総会で、表彰式が行なわれるという。
同フォーラムは昨年、文化財保存全国協議会の「和島誠一賞」を受賞しており、これで全国的な組織から2年連続で高い評価を受けることになった。愛沢伸雄代表は「われわれの活動だけではなく、地域の市民の力が認められたと思っている。受賞は活動メンバーの励みにもなり、とてもうれしい」と話している。
日本都市計画家協会は、都市・地域計画の専門家などで組織。調査・研究や政策提言、社会啓発など都市・地域分野にかかわる分野で幅広い事業を展開している。
同賞は、全国のまちづくりの取り組みの中から「優れた理念を持つ活動や計画、策定プロセス、手法」などを表彰。「まちづくり教育部門」は大賞に次ぐ高位の賞と位置づけられている。
安房文化遺産フォーラムは今回、▽赤山地下壕など地域の戦争遺跡の保存とガイド事業の実践、ガイドブックなどの作成▽稲村城跡の保存と、里見氏ゆかりの他地域との交流▽青木繁の名画「海の幸」誕生の家と記念碑の保存・活用への取り組み▽地元の食文化、生活文化の記録伝承…など、これまでの総合的な取り組みが「平和・交流・共生の地域づくり」として評価された。
(房日新聞2010.6.1付)
「協働」の社会がキーワード
館山 市民の会が趣意書発表
財政・医療・経済を重視
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11月にも予定される館山市長選に向け「市民マニフェスト」をまとめようと結成されたグループ「『立て直そう館山!』全市民の会」(呼びかけ人16人、愛沢伸雄代表世話人)はこのほど、設立趣意書を発表した。
少子高齢化社会が進む中「地域コミュニティの中で、市民がお互いに支えあう社会をどうつくるかが問われている」と問題提起。「行政や市民が協働するなかで(問題を)解決していく、そのような市民が主役になるまちづくりが求められている」と、市民目線での市政運営の必要性を強調している。
「立て直す」べき重要政策課題としては①財政②医療・福祉③観光・農水・雇用創出——を挙げて「足もとの館山市政の現状を学び、そこでの地域課題を確認して、その解決をはかっていく道筋を市民の立場から考えていく」としている。具体的には今後、「元気なまちづくり市民講座」などを市内各地区で開催。参加者と率直な話し合いを行っていくという。
一方、同会が12日に開くキックオフイベントの概要がまとまった。シンポジウム「癒しの海辺のまちづくり第2弾」と銘打ち、午後2時から4時半の予定で南総文化ホールで行う。参加費500円。
先進的なまちづくり事例の紹介として、東京都中野区副区長の石神正義氏が「中野サンプラザの立て直しと里・まち連携」、新潟県旧安塚町長の矢野学氏が「心の過疎をつくらないまちづくり」と題してスピーチする予定。
その後は大島博幸(館山病院総長)、平本紀久雄(千葉の海と漁業を考える会代表)、伊東万里子(劇団貝の火主宰)の各氏も加わり、「立て直そう館山!まちづくりを語ろう」をテーマにパネル討論会を行う。
石神氏は館山市出身。館山など7つの自治体と連携し、地方の一次産業と都会の消費者を結ぶ交流事業を推進する一方、中野サンプラザ社長として同施設の経営立て直しに取り組んだ。
矢野氏は、住民の重荷だった豪雪を資源ととらえ、雪の冷房化などユニークなまちづくりに取り組んだ名物町長。自治体の大型合併に際しては、公共サービス低下を防ぐために全町民参加型のNPO法人を設立、成功させた。
※シンポジウム開催概要=2010.6.12⇒⇒癒しの海辺のまちづくりシンポジウム第2弾
※【房日新聞】2010.5.19付⇒⇒記事詳細はコチラ