展望台
母親大会
(房日新聞2015.10.7付)‥⇒印刷用PDF
10、11日に館山市コミュニティセンターで第21回安房地域母親大会が開かれる。母親大会の歴史は古く、1955年に第1回日本母親大会ならびに第1回世界母親大会が開催されている。きっかけになったのは54年の米国によるビキニ環礁の水爆実験で以来、原水爆禁止と子どもの生命を守ることをメーンテーマとした社会運動が続けられている。
日本母親大会を生んだ中心人物の1人は平塚らいてうである。彼女は対象から昭和にかけて女性の権利獲得のために立ち上がった活動家であり、文筆家であった。与謝野晶子、市川房枝、野上弥生子らと協働し、時に袂を分かちながら女性の権利拡大と平和のための婦人運動を生涯にわたって展開した人物である。
一方では日本で最初の女性による女性のための文芸誌を創刊した。余談ながら、女性より若い恋人のことを呼ぶ「つばめ」という言葉は、平塚が受け取った恋人からの別れの手紙の一文にあり、それが同誌に公表されて流行語になったものだそうだ。
地域に根ざした母親大会ということで96年に始まった安房地域母親大会は今年で21回目を迎える。この間、老後の豊かさ、子どもをめぐる性の問題、食育、身近な環境問題、介護保険、貧困問題、親子のコミュニケーション、地域医療、地域の歴史、地域おこし、郷土料理など世界大会や全国大会とは日お味違ったテーマを据えて、地域という視点から母親大会を運営している。
コンサートや映画の上映会もアリ、今回はドキュメンタリー映画「疎開した40万冊の図書」が上映される。太平洋戦争末期、東京の日比谷図書館の蔵書を戦禍から守るために40万冊の図書が東京郊外の農村の土蔵に疎開した話を関係者のインタビューを交えて映画化した作品だ。映画では、合せて、東日本大震災で避難することができず、取り残された福島県飯館村の多くの図書が除染され蘇るまでの「被災した図書」の話も織り交ぜられていく。
監督は、館山海員学校(現って山海上技術学校)を卒業し船員になった後、映画界に転身した異色の経歴を持つ金?謙二氏で、大会開催の両日とも上映会と監督のトークショーがある。大会スタッフは「名前は母親大会ですが、未婚者も男性も誰でも大歓迎です」と参加を呼び掛けている。
2015.10.7(F)