現在、房州地域の2つの風力発電建設計画をめぐって住民の反対運動が起こっているのをご存知だろうか。
ひとつは、南房総市千倉町の白間津・大川地区。計画を進めているのは北海道に拠点を置く事業者で、房州特有の海に迫った低い山並みの尾根伝いに風車10基を建設しようというものだ。
風力発電施設は風車が大きいほど採算性が向上するとして近年、大型化の傾向が強まっており、今回建設が予定されているのは高さ135m、羽根の長さ50mの国内最大級の風車という。
これだけの高さがあるとまず思い浮かぶのが景観の変化である。同地区は春はお花畑、夏は海を目ざしてたくさんの観光客が訪れる。4年に一度の白間津の大祭には遠方からも人が訪れる。そんな景勝地に果たして巨大風車がマッチするだろうかという問題。
また、風車建設には山の造成と林道の整備が必要になるため、周辺環境への影響が懸念される。付近の海は海女や海士が潜る天然の漁場。清流で知られる長尾側の源流にもあたる。工事で海や川に土砂が流出することはないのだろうか。風力発電施設が引き起こすといわれる騒音や低周波による周辺住民の健康被害も気になる。
もう1ヵ所は南房総市平久里の井野、荒川、平塚3地区に高さ118mの風車を7基建設しようという計画。予定地は南房総市ながら、自治体境界線上にあるため鋸南町佐久間、鴨川市平塚・大山平塚など隣接する地域にも影響があろう。
千倉では短期間に5,000人を超す署名が集まり、住民グループによる説明会も開催されて、一旦は建設に同意した地権者の中に同意を撤回する動きも出ている。一方、平久里のほうは、今月中にも補助金が下りるかもしれないというさらに差し迫った状況の中で反対署名が展開されている。
クリーンエネルギーとして期待される風力発電であるが、民間事業に補助金をつける形で普及促進が図られているため、建設に際しては市の同意は必ずしも必要ではなく、また法的な環境アセスメントも要求されていない。
したがって、今回の2件のように、これだけの巨大施設建設にも拘わらず直接の地権者以外、地元を蚊帳の外に置いたままで計画が進んでしまうところに制度上の問題があり、根耳に水の周辺住民の反発はその分大きい。
※【房日】090714*千倉の風力発電に反対署名…関連記事はこちら。
※「平久里嶺岡の風力発電を考える会」…案内チラシと署名用紙はこちら。