◎地域医療の危機救え
...館山で医師と市民の集い
.....看護学校開設への方策探る
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館山市にある館山准看護学校と、安房看護専門学校が閉校するのを受けて11月28日、同市のコミュニティセンターを会場に、「地域医療の危機と看護学校問題を考える-医師と看護師と市民の集い」が開かれた。会場には市民らおよそ120人が集まり、安房医師会の宮川準会長らの話に聞き入った。
集いは、両学校が閉校すれば看護師不足に陥り、地域医療だけでなく、移住促進活動など多方面に大きな影響を及ぼすとして、新たな看護学校設立の動きがある中で、現状に理解を深め市民としてなにが出来るかを探ろうと、同市の愛沢伸雄さんらが呼びかけ開いた。
集いではまず、医療法人博道会の看護師養成所設立準備室顧問の出口勉氏が現状説明を行い、安房地域では、看護師不足で一般病棟の一部を休止している病院があることや、安房地域では今後5年間で、200人以上の看護師不足が見込まれることなどを説明した。
このあと、宮川会長が移譲前の安房医師会病院が、看護師不足で運営難になったことや、准看護学校と安房看護専門学校との関係、閉校の理由などを述べ、「安房地域の医療維持に向け行動していきたい」と語った。続いて、館山病院看護部長の加藤尚子さんが看護師確保のため北海道や山形まで出向いたが、1人も来てくれなかった苦労を語り、「いまどうするかが切実な問題」と話した。
博道会総長の大島博幸氏も、医療崩壊の問題では医師不足が取り上げられるが、医療、介護、福祉まで関わっている看護師の不足で地域医療が崩壊すると再生できないとし、地域での看護師養成や、離職者の再教育による確保などを訴えた。
また、前館山病院長で、長年、僻地医療に携わっている高野良裕氏は、地域崩壊が看護師不足の根底にあるとし、さらに現在の看護師高学歴化に対し、「(看護師は)いまは管理職になってしまった。昔は看護師が患者の側にいた。だから医師も尊敬していた」などと述べた。
質疑応答で、市民からは「行政への働きかけはしたのか」「看護学校を設立するなら市民の声が届く組織づくりを」などの質問や意見が出され、老後の医療に不安を訴える移住者の声もあった。
呼びかけ人の愛沢さんは、看護学校開設に向け「きょうをスタートとし、大きな市民運動への皆さんの力をお貸しいただきたい」としており、今後広く努力を呼びかけていく考えを示した。
◎活気あるまちづくりへ、多様な視点で意見交換
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市民が主役のまちづくりをテーマに、健康や医療、教育、観光などさまざまな視点からまちづくりを考える「まちづくりシンポジウム」がこのほど、館山商工会議所ホールを会場に行われた。定員を大きく上回る200人ほどの市民が参加。NPO法人全国生涯学習まちづくり協会の福留強理事長を講師に招いての基調講演をはじめ、地域医療の課題や市民1人ひとりの健康づくり、観光まちづくりなどさまざまな視点からの活発な意見交換が行われた。
同シンポジウムは、地域の課題を見つめ直し、暮らしやすい地域づくりを考えてみようと、NPO法人安房文化遺産フォーラム(愛沢伸雄理事長)が企画。基調講演では、「儲かる生涯学習」をテーマに福留氏が登壇し、「これからの時代、老人や高齢者ではなく、自分が学んだことを地域で活かす〝創年〟という考え方が大切」と、全国各地で開催されている創年市民大学や市民手づくりのまちづくり活動を紹介。館山市のNPOや市民活動を評価した上で、「学びあいの中で多彩な人材が育成され、自己の能力が地域で活かされていく取り組み。館山でも創年市民大学が動き出すことを期待している」と激励した。
シンポジウムでは、安房文化遺産フォーラムの池田恵美子さんをコーディネーターに、館山市健康課主任管理栄養士の渡邊侑子さん、館山旅館組合女性部長の幸田右子さん、館山病院院長の高野良裕さんがパネリストとして登壇。渡邊さんは、市内各地で活躍している保健推進員による健康づくり活動や、安房の食文化レシピ集『おらがごっつお』を紹介。「保健推進員の活動は、全国的にも誇れる活動。創年女性を中心に〝おらがごっつお隊〟を結成し、さらに健康づくりの活動を広げていきたい」とした。40歳から大学に入り直し、経営学を学んだという幸田さんは「人生に遅いということはない。1人ひとりが意識を変え、学び合う場をつくることが活性化の鍵になる」と語った。また、高野院長は、離島での医療経験を踏まえ、「地域コミュニティと医療が一体となって支え合う社会を築いていくことが大切。准看護学校がなくなった今、新たな看護師を養成する学校を地域社会で作ることは緊急の課題。創年市民大学と看護学校が合わされば、魅力的な学びの場となり、地域医療の充実も期待できる」と話していた。
シンポジウムでは、特別ゲストとして、観光カリスマである新潟県上越市議の矢野学氏が紹介され、合併前の旧安塚町長として取り組んだ全自治区の法人格取得や、全町民参加を目指したNPO設立の事例も紹介された。
愛沢理事長は、「福留先生にアドバイスをいただきながら、創年市民大学の実現を目指して、今後、ガイダンスやプログラムの開発を図っていきたい」と話していた。
歴史の証人
戦争遺跡は訴える
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◇東京大空襲(東京)〜下町の犠牲者は10万人に及ぶ
◇「震洋」特攻基地跡(千葉)〜船首に爆薬積み体当たり狙う
◇松代大本営跡(長野)〜掘り跡が生々しい象山の内部
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.記者:千葉宣男
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●「創立117年記念感謝祭」に700名
…これからも地域に根差して〜館山病院(千葉県)
千葉県の房総半島南端に位置する館山病院(268床)は、1891(明治24)年創立で、徳洲会では最長の歴史を誇る。10月4日、117周年を記念して感謝祭が催された。
感謝祭では「館山病院のあゆみと安心して暮らせるまちづくり」と題した講演が行われた。
講師を務めたのは、NPO法人(特定非営利活動法人)「安房文化遺産フォーラム」代表の愛沢伸雄さんと、館山病院の高野良裕前院長。
愛沢さんは、館山病院が地域と密接にかかわってきた過去の歩み、館山は江戸時代から医師が多いこと、以前から教育熱心な地域柄であることを紹介した。
高野前院長は、「館山市には“地域力”があります。昨今の医療事情は相変わらず厳しいですが、一緒に考えていきましょう」と話した。
また、10月1日に就任した山田真和院長も挨拶に立ち、「病院の文化を築くためには、市民の皆さまのご協力が不可欠です。愛情をもって育ててください」と続けた。
病院前の駐車場に設けられたメイン会場では、バンド演奏、祭囃子、バザー、餅つき踊り、きつね踊りなどが披露され、地元特産品を販売する出店が立ち並んだ。院内では、頚動脈エコーや骨密度を測定する簡易ドック、ストレス度を測るストレスドック、歯科検診などを実施。過去最多の約700名が訪れ、大盛況となった。
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◎千葉の観光資源、新視点で発掘
…観光モデル形成目指し、各地で試行錯誤
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「戦跡ツアー」「房州石の彫刻」など、千葉県内各地で特定非営利活動法人(NPO法人)や企業が観光産業の確立の一環として観光資源の発掘や見直しを始めている。都心から比較的近いという強みを持つ一方で、目玉となる観光施設や歴史遺産が少ない千葉県。堂本暁子知事の肝いりで、3月には観光条例を施行し、今秋にも昨年に続き観光キャンペーンの開催を予定している。これを追い風に、各地で新たな観光モデル形成を目指し、試行錯誤が続く。(千葉・三崎柚香)
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【旧海軍の航空基地】
戦跡めぐりを観光の目玉に—。
NPO法人の安房文化遺産フォーラム(館山市)は館山市の戦争遺跡保存を目的にツアーを実施している。第二次大戦中に旧日本海軍の航空基地があった館山市だが、その戦跡は暗くて危険という理由で取り壊しの危機にあった。「遺跡としてなんとか守れないか」と高校教師だった愛沢伸雄代表が、戦跡めぐりツアーを始めた。
現在では県内外から年間10校以上が平和学習を目的として訪れ、04年に一般公開された旧日本軍の赤山壕(ごう)には約6000人が訪れた。大手旅行会社も日帰りパックの旅行先に選定するなど、業界での認知も浸透してきている。
ただ、「単に物見遊山の観光では、はやり廃りがあり、遺跡保存にはつながらない」(愛沢代表)というジレンマを抱える。求めるのは「テーマを持つ旅行」だが、遺跡に眠るストーリーを語れるガイドの高齢化という問題がある。さらに「宿泊施設や商店など地域全体で情報や意欲を共有しないと難しい」(同)と指摘する。発掘した観光資源を観光ビジネスに昇華させるには、地元企業や行政の協力が不可欠だ。
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【体感・体験】
かつて千葉県は「黙っていても海水浴客が来る観光地」(水澤千秋千葉県商工労働部次長)だった。それが娯楽の多様化や海外リゾートの人気で衰退。07年度の海水浴客の入り込み数は、71年度の5分の1にまで落ち込んでいる。観光復興に力を入れる県は、「体感・体験型」観光を打ち出している。07年にJR東日本とタイアップした『ちばデスティネーションキャンペーン(ちばDC)』では、料理教室、農業体験などを多数組み込んだ。
新たな観光ビジネスの構築を—。富洋観光開発(富津市)は富津市金谷地区でレストラン、土産店を営む。都心から60キロメートル圏内にあって自然が豊かに残るという地理的な強みを生かし、「心がリセットできる場所」(鈴木裕士社長)づくりを始めた。
今春、房州石を使った彫刻を街中に展示。美術館やアトリエも建設予定で、「石と芸術」をテーマに、異空間を提供する観光事業を進める。「観光をビジネスにするため、新たな仕組みが必要」として観光とビジネスの収益性のバランスを重視する。「体験ツアーだけでは手間と人手がかかってしまいがちで、収益が見込みにくい」という。
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【面の広がりがカギ】
「"気軽な旅行なら千葉"というイメージは定着している」と、ちばぎん総合研究所(千葉市稲毛区)の小松孝之研究員は分析する。「単なる体験だけではなくて、楽しみ方を提案できる周辺でのメニューづくりが重要」として、遺跡や体験などの観光資源を生かした各地域での面の広がりを求める。永続性と収益性を両立させ、千葉ならではの観光を確立できるか。模索は始まったばかりだ。
●文化の日表彰、安房は7人と2団体
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県は、平成20年度文化の日千葉県功労者表彰の受賞者を発表した。今年度受賞者は県内全体で女性12人を含む個人63人と5団体。このうち阿波地域では個人7人と2団体の受賞が決まった。いずれもそれぞれの分野で、県の発展に寄与した功績を称えての表彰。11月3日午前10時から県議会議場で表彰式が行われる。
安房の受賞者と功績は次のとおり。=敬称略
(中略)
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【地域観光振興功労】
▽NPO安房文化遺産フォーラム
平成5年に安房地域の自然環境や、文化遺産保存活用による地域づくりを狙いに設立。16年のNPO法人となり、行楽客、学習旅行の生徒らを対象としたガイドツアーや、里見ウォーキング、まちかどミニ博物館などに取り組み体験型観光の振興に貢献。館山市館山
館山市のNPO法人「安房文化遺産フォーラム」(南房総文化財・戦跡保存活用フォーラムから改称)が、地域の歴史や文化を紹介するガイドブック「あわ・がいど」の第4弾として、「安房古道を歩く」(縦横21センチ、48ページ、600円)を発行した。
安房地域の郷土史研究家や山歩きの専門家でつくるグループ「歴史工房安房」(島田輝弥代表)の会員たちが、実際に山道を歩くなどして情報を集め、執筆した。江戸時代に旅人が房州往還の脇道として利用した、「房州木ノ根峠」(南房総市)を越える山道など、館山、鴨川、南房総の各市や鋸南町の14コースが地図やイラスト、写真と共に紹介されている。
問い合わせは、同NPO法人(0470-22-8271)へ。
◎エコの潮流〜エコウォーク
…埋もれた名所発掘も
(青木繁≪海の幸≫ウォーキング)
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案内されて細い路地に足を踏み入れると、新緑に包まれるように立つ古民家が見えてきた。1904年、画家の青木繁が滞在し、代表作「海の幸」を描き上げた小谷家。家主の栄さん(84)によると「地元でも長く忘れられていた逸話だった」という。
青木繁「海の幸」1904年(福岡県久留米市・石橋財団石橋美術館蔵)
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「エコウォーク百選」にも選ばれた、館山市の富崎地区の漁村を巡る4・5キロ・メートルの散策コース。さりげない風景が続くが、「ガイドが付けばどこでも名所になります」と、NPO法人南房総文化財・戦跡保存活用フォーラム事務局長の池田恵美子さん(47)は足を止めた。
家主の小谷さん(右)と談笑するガイド役の池田さん。地域の人とのふれあいも「エコウォーク」の魅力の一つだ ただ健康のために歩くのではなく、地域の自然や文化を学びイベント収入の一部を寄付することで、その保護に貢献しようという「エコウォーク」。館山市では、産官民連携による「たてやまエコツーリズム協議会」が市町村単位では国内最多の8コースを整備し、普及に努めている。
PR不足からか、これまでの参加者は決して多くはない。それでも、平日・閑散期対策としてホテル関係者の期待は大きい。「埋もれていたものを見つけ、磨きをかけるんです」と池田さん。地元住民には思いも寄らなかった場所を観光資源にしようという取り組みとしても、注目されている。
【メモ】館山市内にはほかにも、戦国大名・里見氏ゆかりの史跡、白砂青松の平砂浦海岸などを歩く「エコウォーク百選」認定コースがある。6月中旬〜7月上旬にイベントを開催予定。問い合わせは、たてやまエコツーリズム協議会(0470・28・2211)。
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“エコ”“体験型”をうたい文句にした「エコツーリズム」が注目を集めている。背景には、環境への関心の高まり、旅行者が自然に及ぼす悪影響への反省があるとされる。この大型連休中、各地で企画されたイベントを追いながら、県内のエコツーリズム事情を探る。(田中誠)