従軍慰安婦よ安らかに
かにた婦人の村で鎮魂祭
房日新聞 2012年8月17日
館山市大賀の婦人保護長期収容施設「かにた婦人の村」(天羽道子施設長、入所者71人)で、67回目の終戦記念日となった15日夕方、従軍慰安婦として亡くなった人の「鎮魂祭」が行われた。入所者らが朝鮮民謡の「アリラン」を歌いながら、鎮魂碑へ献花した。
性的な暴力により療養が必要となった女性たちの安らぎと療養の場の必要性を説いた故深津文雄牧師が、1965年に同施設を設立。深津牧師に賛同した天羽施設長が活動をともにし、深津牧師の遺志を受け継ぎ、運営にあたっている。
鎮魂祭は、入所者の1人が、「従軍慰安婦となった娘たちの慰霊塔を建ててください」と切願したのが始まり。初めは1本の木を植えて祈りを捧げ、その後石碑を設立。27年間毎年、終戦の日に行われている。入所者は「性の提供をさせられた娘たちは、足手まといになると放りだされ、荒野をさまよい、凍てつく原野で野良犬の餌食となり土にかえった。同僚の顔が浮かぶ」と語っていたという。
鎮魂祭では、深津牧師が作詞した歌を「きよらのおとめつれさられ、なげきのなみだあともなく」とアコーディオンのメロディーに合わせて合唱。天羽施設長はあいさつで、「67年間の平和を享受してきたが、平和の中に浸ってよいのか、その思いの中荷甘んじでいてよいのかという気持ちを強めてまいりました。このことは日本の戦後処理がなされていないことが1つにある。日本従軍慰安婦に対し、日本がすべきことが、この間、なされないままで引きずられてしまっている」と語りかけた。
献花された花は、東京の在日韓国人から寄付されたニチニチソウなどの苗で、一人ずつ石碑の周りに置いて行き、手を合わせて冥福を祈った。