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戦争遺跡保存全国シンポジウム①

「戦後70年」大会へのお誘い

愛沢伸雄=NPO法人安房文化遺産フォーラム代表=

(房日新聞寄稿2015.9.1付)⇒印刷用PDF(連載5本)

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「戦後70年」を迎えた本年9月5・6日、11年ぶりに館山で戦跡大会が開かれる。前回大会以降、市民が主役となった文化財の保存・活用は、点から線につながって面となり、地域全体を館山まるごと博物館と見立てて、「平和の文化」を活かしたまちづくりを官民協働で進めてきた。平和教育や平和創造が正念場といえる昨今、本大会では全国との地域間連携をさらに深め、地域に根ざした「平和の文化」を語り継ぎ、ピース・ツーリズムという平和産業を創出する契機にしたいと願っている。

ユネスコ(国連教育科学文化機関)が提唱した「平和の文化」とは、対立や争いを創造的な対話によって解決していくという行動様式や価値観をさす。これは、単に戦争がない状態を平和と捉えるだけでなく、貧困や差別、環境破壊のない持続可能な地域社会を目ざした考え方である。私たちも、戦跡や文化遺産から先人の培った〝平和・交流・共生〟の精神を学び、「平和の文化」の理念が生きたまちづくりを呼びかけてきた。

5日は南総文化ホールにて、10時より映画『赤い鯨と白い蛇』上映会、13時より全体会において河正雄(ハ・ジョンウン)氏の記念講演や、沖縄県南風原町・高知県香南市・館山市の事例を紹介するまちづくりディスカッションを行なう。

映画は、安房高女・安房南高校出身のせんぼんよしこ監督が、香川京子主演で制作した平和祈念映画である。美しい館山の風景と戦争遺跡、やわたんまち(八幡祭礼)を舞台に、平和と生命の大切さが描かれている。

河正雄氏は、在日韓国人二世として日韓の架け橋となった芸術メセナの実践者である。その活動実績により、韓国光州市立美術館名誉館長や朝鮮大学校美術学名誉博士となり、韓国宝冠文化勲章を受章している。また、田沢湖畔に朝鮮人労働者の慰霊碑を建立するなど、その活動実践は多岐にわたる。

翌6日は館山市コミュニティセンターにおいて、3つの分科会で全国の事例報告のほか、「米占領軍の館山上陸と直接軍政/証言者のつどい」をテーマとした特別分科会を開催する。

NHK『BS歴史館』の制作者・佐野達也氏は、ミズーリ号の降伏文書調印式の後、GHQによる「三布告」の日本占領計画が中止に至った経緯と館山の軍政を紹介したドキュメンタリー番組について解説する。

元館山市教育長の高橋博夫氏は、館山海軍航空隊開隊から赤山地下壕建設に至る間の住宅移転命令をはじめ、米占領軍の上陸と軍政について重要な証言を行なう。

青山学院高等部の佐藤隆一教諭は、赤山地下壕に隣接した場所(現在の市営プール)に1926年開設された青山学院水泳部合宿所が、1946年9月に海軍の極秘命令により譲渡と立ち退きが緊急に実施されていたことの調査報告を行なう。ほかに、安房中学の勤労動員、本土決戦下の漁村・布良の出来事、那古地区の川崎空襲、野島崎の艦砲射撃などに関わる証言が報告される。

本稿では、大会の報告概要の一部をシリーズで紹介し、多くの方の参加をお待ちしている。大会参加費は、1日券千円・2日券2千円、大学生は半額、高校生以下は無料。参加申込・問合は090-6479-3498。

特別企画として、5日午前は赤山地下壕跡のガイドサービスを行なう。「戦後70年」の企画展を、8月26日〜9月8日に南総文化ホールギャラリー、9月5〜6日に館山市コミュニティセンター展示室にて入場無料で開催する。

15年9月1日 3,315

特定非営利活動法人(NPO) 安房文化遺産フォーラム

旧称:南房総文化財・戦跡保存活用フォーラム(2008年5月に現在の名称に変更)

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