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名作の舞台へ(絵画 第11回)

《海の幸》 千葉県館山市

(ジパング倶楽部 2021年4月号) ‥⇒印刷用PDF

名作の舞台へ

いつか、あの作品の舞台へ行ってみたい——。

小説、映画、絵画、音楽・・・・・・名作にはそんな、人を引きつける力があります。ずっと凍路に残る、名作の舞台を紹介します。

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青木繁《海の幸》

1904年 油彩・カンヴァス 70.2×182.0センチ

重要文化財 石橋財団アーティゾン美術館蔵


漁師たちが獲物を背負い意気揚々と更新していく——。荒々しくも生(せい)のエネルギーにあふれた絵画が、青木繁の《海の幸》です。

1882(明治15)年、今の福岡県久留米市に生まれた青木は、高等小学校で坂本繁(はん)二郎(じろう)に出会います。青木は坂本が通う画塾に入り、絵画の道へ。二人は生涯、画家として切磋琢磨することになります。

17歳で上京した翌年、青木は東京美術学校(現東京藝術大学)に入学。在学中『古事記』などの神話や文学など書物を読みふけった経験は、白馬会第8回展での《黄泉(よもつ)比良坂(ひらさか)》など十数点の受賞、さらにのちの《日本武尊(やまとたけるのみこと)》など、神話をモチーフにした一連の作品に大きな影響を与えます。

1904年に学校を卒業した青木は、坂本、森田恒(つね)友(とも)、恋人・福田たねと房州の布(め)良(ら)で夏を過ごします。天富命(あめのとみのみこと)が忌部(いんべ)一族を率いて上陸したという開拓神話が伝わる地で、太陽と海、恋人の愛を受けた青木は、次々と作品を制作。そして生涯の最高傑作ともいわれる《海の幸》——。坂本が見た漁の様子や布良崎(めらさき)神社の神輿(みこし)から着想を得たという作品は、古代神話を彷彿させる勇壮さで見る者を圧倒し、大変な評判を巻き起こします。

今も布良には、青木たちが滞在した小谷家(こたにけ)住宅が「青木繁『海の幸』記念館」として残されています。その後、青木は貧困や作品の評価に苦しみ、病を患ってわずか28歳で生涯を閉じます。しかし、近代日本絵画の代表作ともなった《海の幸》を目の当たりにすれば、確かにあの輝かしい夏はあったのだ、と思えてなりません。

文/綿谷朗子


アーティゾン美術館/2020年に開館。前身はブリヂストン美術館。「STEPS AHEAD(ステップス アヘッド)新収蔵作品展示。(〜5月9日)で《海の幸》を展示中。

●入館はウェブでの日時指定予約制。10時から17時30分。上記展示は月曜休(5月3日は開館)。ウェブ予約チケット1200円、当日チケット(窓口販売)1500円。東京駅八重洲(やえす)中央口から徒歩約5分。問い合わせは、ハローダイヤル☏050・5541・8600


青木たちが滞在した布良の集落。写真左に青木が「僕等の海水浴場」と呼んだ「阿由戸(あゆど)の浜」があります。●内房線館山駅から安房(あわ)白浜行ジェイアールバス関東約22分阿波自然村下車。青木繁「海の幸」記念館・小谷家住宅は徒歩3分(現在休館中)


●観光の問い合わせ/館山市観光協会☏0470・22・2000

21年3月25日 1,489

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