ウミホタルの光に平和の祈りを込めて
軍事研究されたウミホタル
東京湾アクアラインのPA名でなじみ深いウミホタル。実は第二次世界大戦中、ウミホタルの光を軍事利用する研究がされていたのだ。館山で発見され明らかになった史実とは。
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ウミホタルの発光特性に着目した陸軍
夜の海を幻想的な光で輝かせるウミホタル。カニやミジンコと同じ甲殻類で、砂の中に住む体長3ミリ程の夜行性生物だ。刺激を受けると発光酵素を放出し、これが水中の酸素に反応し青白く光る。ウミホタルはこの光を外敵の目くらましや、仲間とのコミュニケーションに使う。ウミホタルに似た動物性プランクトンの夜光虫や、ホタルなどの発光生物が生きている間光るのに対し、ウミホタルの体内にある発光酵素は、水をかければいつでも反応する。第二次世界大戦中、日本軍はこのウミホタルの発光特性に着目した。ウミホタルを乾燥してすりつぶした粉末を兵隊に持たせて、戦地で水や唾液で発光させ、照明や仲間との連絡、また特攻機が夜間敵艦隊に体当たりするための照明弾として使えないかと考えたのだ。
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子ども達の勤労動員でウミホタル採取
軍は研究用ウミホタルの採取地として、世界有数の生息地千葉県館山を選んだ。地元でもほとんど知られない存在だったウミホタルは、軍の命令を受けた子どもたちによって採取されたという。この史実は、教材づくりのために戦争遺跡の調査に取り組んでいた高校世界史の愛沢伸雄教諭(現NPO法人安房文化遺産フォーラム代表)によって明らかになった。
愛沢教諭は旧制安房中学校(現県立安房高校)の教務日誌の勤労動員作業記録に「海蛍採集」の記載を発見。生物の教師や当時の生徒たちに聞き取り調査をおこない「夜の浜に集合して魚のアラなどを括り付けたものを桟橋から垂らし、ウミホタルを採取して軍に供出した」という証言を得た。
戦後50年の平和祈念事業でウミホタル発光を紹介したことがきっかけとなり、現在の館山ではウミホタル鑑賞が人気である。戦後60年には、この史実を基にした合唱組曲『ウミホタル〜コスモブルーは平和の色』が誕生し、全国で歌われるようになっている。明るく輝く美しい光を、悲しい青に染めてはならない。(花)
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【取材協力】
NPO法人安房文化フォーラム
0470-22-8271