大会アピール「戦争遺跡と文化財を活かしたまちづくりをすすめましょう」
2015年9月5・6・7日、千葉県南総文化ホール、ならびに館山市コミュニティーセンターを会場に、400名の参加の下で、第19回戦争遺跡保存全国シンポジウム千葉県館山大会が開かれました。大会の開催にあたり、共催していただいたNPO法人安房文化遺産フォーラム、またご後援いただいた館山市、館山市教育委員会、館山市観光協会、千葉県歴史教育者協議会に対し、心より感謝申しあげます。
今大会が開催された館山市は、その地理的条件から、明治以降東京湾防衛の要衝とされ、海軍航空隊、海軍砲術学校、東京湾要塞に関連する多くの軍事施設が建設されました。ことにアジア太平洋戦争末期には本土決戦を準備した特攻基地や陣地が構築された結果、市内には47件の戦争遺跡の存在が確認され、中でも赤山地下壕は市の指定文化財となっています。さらに日本の降伏文書調印の翌日には、米占領軍の上陸地となり4日間の直接軍政が敷かれた地でもあります。こうした戦争遺跡に加え、里見氏や青木繁など、地域の豊かな歴史と文化遺産をまちづくりに活かす取組みが「館山まるごと博物館」として構想され、行政と市民の協働によって大きな成果をあげています。「戦争遺跡を活かしたまちづくり」の先駆的な取り組みとして注目するとともに、その一層の充実とご成功を願うものです。
史跡・有形文化財として指定・登録された戦争遺跡は230件となり、マスコミも戦争遺跡に注目し大きく取り上げています。敗戦から70年が経過し、戦争体験者が急速に減っていくなかで、「語り部」として戦争遺跡を保存・活用することは、いまや国民共通の課題となっていると言えます。一方で、武蔵野市中島飛行機武蔵製作所変電室のように、構築物の劣化や開発により解体・消滅する戦争遺跡が相次いでおり、早急な対策が求められます。また文化庁の『近代遺跡調査報告書⑨(政治・軍事)』の発刊は2004年の刊行予定から11年が経過した今も刊行のめどがたたないまま推移しています。一日も早い刊行を要望すると同時に、執筆者に対し記述の削除や変更を求めることなく客観的、科学的な内容を保証することを強く求めます。都道府県や各地方自治体においては、刊行を待つことなく独自に戦争遺跡の調査、保存、史跡・文化財指定を進めることを求めます。
戦後70年の今年、集団的自衛権の行使を可能にするための安保法制が国会で審議され、国民的な議論となっています。沖縄における普天間基地の辺野古移転の問題も緊迫した情勢を迎えています。安保法制を認めるのか否か、今、日本は戦後社会の分水嶺に立たされていると言えます。
私たちは、戦争を肯定することなく、平和のために戦争遺跡を保存・活用することが、戦争遺跡保存運動の原点であることを再確認するものです。「戦争のできる国づくり」をけっして許さず、戦争に反対し平和を守り続けようと願うすべての人々と手をつなぎ、私たちの運動を進めることを確認し、大会アピールとします。
2015年9月6日