明治期、安房のアワビ漁師たちはアメリカへ渡り、カリフォルニア州モントレー湾域に移住し、採鮑漁に従事しました。寒流のカリフォルニア海流で器械式潜水具を身につけてアワビの大漁に恵まれ、アワビステーキやアワビ缶詰などでアメリカに食文化革命を巻き起こしました。安房からは七浦町(現南房総市千倉町千田)を中心に潜水夫を養成して渡米し、産業に成功していきました。市民権を得て日系人コミュニティを形成していました。
しかし日米開戦後、アリゾナ州ポストン強制収容所に移送されました。アメリカへの忠誠を誓わされ、房総への本土侵攻計画「コロネット作戦」の情報部隊として協力させられたものと考えられます。
その頃の安房は本土決戦に備えて7万の軍隊が配備され、防衛の最前線として次々と特攻基地が作られていました。食糧増産のために花作り禁止令が出され、花畑は芋畑に変えられていきました。花の種苗を持っている者は「国賊」と呼ばれ処罰される密告社会構造において、渡米したアワビ漁師の家族たちは、どのような思いで生きてきたのでしょう。戦争が終わっても、日本語の話せないアワビ漁師の二世・三世らと安房の家族らは、引き裂かれたまま出会うこともなく生きていきました。
地域の調査研究を契機として、「戦後60年」には平和祈念事業として【アワビとウミホタルがむすぶ日米交流】を開催、二世・三世らの来日が実現し、親戚同士の出会いが実現しました。
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【参考書籍】
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【参考論文】執筆=山口正明「太平洋を渡った南房総のアワビ漁師たち」
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