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戦争遺跡保存全国シンポジウム②

米占領軍の館山上陸の新史料発見

愛沢伸雄=NPO法人安房文化遺産フォーラム代表=

(房日新聞寄稿2015.9.2付)⇒印刷用PDF(連載5本)

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館山は、米軍の関東侵攻計画「コロネット」作戦だけでなく、占領計画「ブラックリスト」作戦でも上陸地点と想定されていた。第2次世界大戦の終結とその後の日本の占領をみるうえで、館山は世界史的な出来事の地であったといえる。

戦艦ミズーリ号で降伏文書調印式がおこなわれた翌9月3日9時30分、カニンガム准将が率いる米陸軍第8軍第11軍団112騎兵(機動)連隊戦闘団(以下112RCTと略)は館山に上陸した。上陸後、カニンガムは「米軍ニヨル館山湾地区ノ占領」6項目の指令を出し、「軍政参謀課」を設置した。占領では「一切ノ学校ヲ閉鎖」をはじめ、劇場や酒場の閉鎖、市民の夜間外出禁止などを命じ、日本本土では唯一の「直接軍政」を敷いたのである。

このたび、112RCTに関わる資料を有する米国テキサス軍事博物館に問い合わせたところ、リサ・シャリク副館長のご厚意で、館山に上陸した112RCTに関わる貴重な資料や写真の提供を受けた。館山での占領軍については不明なことが多かったか、解明の一歩となった。

資料はカニンガムが署名した報告書であり、初公開された。ここにその内容を紹介する。それによると、ブラックリスト作戦は8月18日に実行され、22日に112RCTがフィリピンから日本へ移動を命じられ、館山には9月3日に上陸し、拠点を築く任務が与えられた。また、輸送師団や第112機甲連隊は、館山の海岸を上陸拠点として千ヤード(900m)確保する特務を命じられた。事前に特殊部隊が機雷の掃海をし、海兵隊員を中心とする先遣隊が館山の調査活動をしていた。

112RCTは2日の午前7時に東京湾に入り、ミズーリ号の降伏調印式の光景を見ていた。翌3日は、午前3時に輸送師団が館山湾に入り、午前7時に館山航空基地の北3.6kmに停泊した。すでに先遣隊が館山の海岸を使用するのは困難と報告していたので、高ノ島にある館山海軍航空隊水上班滑走路が上陸地として指定された。午前7時30分に外務省の林男爵や陸軍の野村大佐、海軍の鬼塚大佐が、日本人通訳を伴い滑走路に現れた。彼らはカニンガムやスタッフとの協議のため、輸送師団の旗艦ラバカに案内された。

日本側は、館山の陸・海軍や民間人の状況と、武装解除に迅速な行動をとっていると報告した。カニンガムからは上記6項目の占領指令に従って、日本側に最大限の協力が要請され、会談は午前9時30分に終了した。

その時刻に112RCTや機甲連隊などが波状的に上陸し、基地の周囲を占拠した。午前10時に司令所が滑走台そばの水上飛行機格納庫に開設され、第11軍団指揮官やウィルキンソン大将が上陸して査察した。数日前から来ていた分遣隊は任務が解かれた。司令所は航空隊本庁舎へ移され、輸送してきたもの積み降ろしは3日に終了し、翌日から市内のパトロールが強化され、館山周辺の砲台を査察し使用不能にした。海岸線の道路に沿って勝山から神戸地区まで偵察パトロールがおこなわれ、館山駅には治安部隊を配備し、館山市内には他の占領軍兵士の立ち入りが禁止された。

この事態のなかで外務省館山終戦連絡委員会の林安委員長は、カニンガムによる6項目の占領指令に驚き、すぐに政府・外務省に連絡し、米太平洋陸軍総司令部に館山の直接軍政の中止を求めた。マッカーサー「三布告」と連動したもので、岡崎勝男の迅速な行動と重光外相とマッカーサーの会談により、3日の「三布告」が撤回された。ただ、軍都館山の市民や旧軍人の動きに注目して占領政策のあり方を模索したと思われ、その後の館山市民の協力的な姿勢や、軍事施設の解体が順調であったことなどが契機となって変わっていったと推察される。

なお、報告書には「完全な地下海軍航空司令所が館山海軍航空基地で発見され、そこには完全な信号、電源、他の様々の装備が含まれていた」と赤山地下壕のことが記載されている。

6日には占領軍は軍政が「米軍と市民との間に突発しそうな事件を未然に防ぐのが第一の目的」と表明し、9月7日は学校の開校や酒場営業を許可している。こうして直接軍政は「4日間」で解除されたのであった。


⇒⇒詳細は『「戦後70年」証言・調査記録集』に収録

15年9月2日 4,362

特定非営利活動法人(NPO) 安房文化遺産フォーラム

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