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庶第二〇五・ 昭和拾年九月参日


負債整理組合事例ニ関スル件報告

本月三日付政第一六〇九・御照会標記ノ件別紙ノ通候也

昭和十年八月二十四日

安房郡富崎村長神田真吉

千葉縣経済部長殿


一、村ノ径済更生計画及其ノ實行状況ノ概要

村更生計画ハ経済更生委員会ニ於テ審議樹立セラレタルモノニシテ各実行団体別ニ其ノ主要項目ヲ挙グレバ次ノ如シ


村當局

1. 更生委員会ノ充分ナル活動ヲ計リ特ニ各実行団体間ノ・絡提携ヲ圖リ其ノ実行ノ指導統制ヲナスコト

2. 役場諸事務ノ改善刷新ヲナシ特ニ既設納税組合ノ完納成績持続ヲ図リ以テ村経済ノ確立ヲ期スルコト

3. 消費経済ノ合理化生活改善ヲ実行セシメ家計簿ノ記帳励行ニヨリ魚家計画経済ノ実行ヲナサシムルコト

4. 経済及精神的落伍者ノ救済医療救治事業ノ徹底


漁業組合

1. 漁法ノ改良 新規漁業ノ選擇助成

2. 多角的漁業経営ノ奨励

3. 新漁場ノ発見

4. 漁業共同経営奨励ト労資分配ノ協調

5. 漁期漁場ノ制限稚魚放養築磯磯掃除ニヨル浅海魚藻ノ増殖

6. 養殖副業ノ奨励

7. 水産物加工施設の拡充

8. 漁業資金の供給

9. 港ノ完成

10. 漁村青年ノ指導 訓育


負債整理組合

1. 完全ナル負債整理 更生計画 負債償還計画ノ実行ニヨリ組合員ノ家庭経済ノ確立ヲ期スルコト

2. 組合員ノ精神的更生運動ノ実行

3. 消費ノ合理化 計画経済ノ実行

其ノ他各種団体ニ於テモ其ノ職能ニ応ジタル事項ヲ分担実行シツツアリ


以上諸計画ハ実行尚日浅キモ着々実績ヲ挙ゲツツアリ特に新規漁業中揚繰網共同経営ノ如キハ二ヶ月余ノ従業ニテ二万四千八百円ノ漁獲アリタリ

布良相浜負債整理組合ハ客年三月七日ノ設立ニシテ整理事業資金九万八千六百円ハ本年二月十三日供給アリ・・鋭意負債條件緩和ノ協定ト貸付トニ努力セシ結果予期以上ノ好成績ヲ以テ貸付ヲ終了シ現在ハ整理資金及残負債ノ償還 担保設定登記事務 更生精神ノ強化運動等ニツトメツヽアリ。


二、無限責任富崎村布良負債整理組合ノ概況

(一)設立年月日

昭和九年三月七日

(二)區域

富崎村大学布良

(三)設立ノ動機

本組合區域ハ世帯数三百四十四中漁業者二百二十一漁業附随商工業者百二十三ニシテ生産ハ唯漁業一途ノミトサヘ謂ヒ得ベキ純漁業部落ナリ

往年和舩鮪延縄漁業 ブリ網漁業等ノ・盛ヲ極メタル時期ニ在リテハ部落民ノ経済ハ非常ニ豊ナリシモ近年機械漁業ノ勃興スルニ及ビテハ之ヲ実行スルノ資本ニ乏シク追次衰微ノ一路ヲ辿リ来レリ 一方数回ニ亙ル火災海・ノ災ニ遭ヒ加ヘテ大正十二年ノ大震災海・ノ甚大ナル被害ヲ受ケ再起シ得ザル程度ノ経済的打撃ヲ蒙レリ、・・打続ケル沿岸漁業ノ不振ト負價ノ低落トハ累年多額ノ負債ヲ生ゼシメ 近時魚家ノ収入ハ生活費ヲ控除セバ負債ノ私払ヲモ満シ得ザルノ苦境ニ陥リ尋常一様ノ手段ヲ以ハコノ重圧ノ軽減ハナシ得ザルノ状態トナレリ。

於茲昭和七年十一月縣指導ノ下ニ経済更生委員会ヲ組織シ更生計画ノ樹立実行ニ着手セリ

委員会ニ於テハ村内諸経済調査ノ結果負債整理ノ緊急実施ノ要ヲ認メ昭和八年十一月本組合の組織ヲ議決シ昭和九年三月七日設立の認知アリタリ


四、組合員数及区域内住民ノ加入状況

組合区域内住民世帯数ハ三百四十四内組合員数は百八十八名ニシテ約五割五分ニ當レリ 未加入ノ主タル理由ヲ大別スレバ左ノ如シ

イ. 負債ナキ者又ハアルモ極メテ少額ニシテ自力ニヨリ價還ノ可能ナルモノ

ロ. 組合法ノ真精神ノ理解ニ乏シキ為

ハ. 負債多額ニシテ整理計画ノ樹タザル者


五、區域内の産業及経済ノ状況

イ. 主要生産物ノ生産及販賣状況 (表は別データ)

販賣状況

漁業組合経営ノ共同販賣所ニ於テ村内仲買人十数名ノ競争入札に付シ販賣ハ東京 横浜 横須賀ヲ主トシ静岡方面ニマデ出荷ス

運送ハ東京湾汽船会社貨物船 個人経営運送船 時ニハ鉄道等ヲ利用シテ出荷ス

生産物ノ一部ハ舘山北条町等郡内ニ販賣ス


ロ. イ以外ノ収入状況 (表は別データ)

ハ. 経済用品ノ購入状況

ニ. 産業経営用品ノ主ナル購入状況

ホ. 公租公課ノ負担状況


(六)區域内住民及組合員ノ資産負債状況 (表は別データ)

(七)組合員ノ産業組合漁業組合加入及利用状況 (表は別データ)


右ノ外組合員ノ水産漁獲物ハ凡テ漁業組合経営ノ共同販賣所ニ依託シ魚仲買ニ競走入札ノ方法ヲ以テ販賣ス。ソノ負價ハ五日目毎ニ漁業組合ニ於テ立替拂ヲ受クルニヨリ魚価不拂等ノコトナク非常ナル利便ヲ受ク。


(八)負債整理計画 (表は別データ)

(九)組合員ノ経済更生計画及負債償還計画樹立ノ状況

組合員ノ更生計画ハ村及各更生計画実行團体 特ニ収入増加ニアリテハ漁業組合ノ実行諸事項ノ成績如何ニ・フ事多キヲ以テソノ計画樹立ニ當リテハ常時緊密ナル・路ヲ保チ個々組合員ニツキソノ収支ノ状況ヲ詳細調査シ 増収計画消費節約計画等ヲ樹テ之等ヨリ生ズル剰餘金ニヨリ負債價還計画ヲナシ以テ全般的更生計画ヲ樹立セリ

(十)條件緩和ニ関スル斡旋状況及其ノ成績

條件緩和斡旋着手ニ當リテハ事前ニ於テ組合員ノ申出債務ニ付其ノ発生原因年月日辨済状況等詳調シ併而其ノ更生計画ニ準據シ緩和ノ程度ヲ研究豫定シタリ 其ノ成案ヲ持チ役員ハ各々分担ヲ定メ一勢ニ斡旋ニ着手セリ 幸ヒ債・者ニ於カレテハ本組合事業ノ理解充分ナルモノ多ク、債務者ノ更生計画ヲ基礎トセル合理的條件緩和ノ申出ニ対シ誠意ヲ以テ應ゼラレタル結果所期ノ成績ヲ充分収メ得タリ。其ノ成績ノ一半ヲ示セバ次表ノ如シ (表は別データ)

(十一)負債整理資金貸付ノ状況

整理資金貸付額ハ組合役員会ニ於テ負債額及其ノ條件緩和見込額 更生 價還計画 担保物件 組合員ノ素行等精査スルト共ニ組合員ノ貸入希望額ヲ参酌シテ之ヲ決定シタリ 本年二月十三日資金供給アルヤ直チニ債・者 組合員ヲ組合事務所ニ招致シ債・者ノ受領證 債務者ノ借用證引換ニ貸付ヲナセリ 債・者出頭シ得ザルモノニ対シテハ委任状ヲ徴シテ之ヲ貸付セリ

(十二)負債償還確保ノ方法

本部落ニ於テハ明治初年以来共同三厘日掛ニヨル布良崎神社ノ造営 明治四十四年以来ノ納税組合十日掛等ノ旧キ訓練習慣アリ 又漁業収入ハ現在五日目毎ニ現金収入アルニヨリ日掛法ニヨル集金ハ最モ確實ニシテ其ノ集金方法ハ十四人乃至二十五人ヲ一組トシ組員ハ順次輪番ニ集金シ即時組長ニ納入スルコトヽセリ 輪番集金ノ方法ハ各組員相互ニ督励シ合ヒ自治的気分横溢シ其ノ成績極メテ良好ニシテ未ダ一人ノ滞納者ナク當部落ノ実情トシテハ最良策ト思料セラル 尚組合以外ノ者ニ対スル償還確保ニ付テハ現在適策ヲ考究中ナリ

(十三)出資ノ口数金額及其ノ拂込方法並拂込

該當ナシ

(十四)組合費ノ分賦方法及其ノ拂込状況

組合費ノ分賦ハ組合員凡テ同額ニシテ其ノ額ハ総会ニ於テ議決シ拂込方法ハ組合ヘノ償還日掛ニ合算シテ納入スルガ故ニ現在迄滞納ナシ

(十五)負債償還積立金醵出ノ方法及積立状況

醵出ノ方法ハ(十四)ニ・ジク其ノ積立ハ郵便貯金トス

(十六)損失補積立金積立状況及管理状況

本組合ニ於テハ損失補ノ目的ニテ全組合員保険加入ヲナスコトニ定メ簡易保険契約済ノ者現在七十三名ニシテ追次契約シツヽアリ 又日掛積立金ノ余剰金ハ凡テ損失補積立金トシテ積立ツルコトヽセリ

(十七)組合員ノ共同事業ノ状況

ナシ

(十八)経済更生計画及負債償還計画督励方法

毎月定例会議トシテ一日役員会十五日旦那会 旧二十五日主婦会議ヲ開催シ組合事務ニ関スル諸事項ヲ議スルト共ニ計画実行ニ関スル督励懇談ヲナシ居レリ 一半組合員ニ対シテハ組合長ニ於テ随時家計簿ノ検閲 計画実行ノ督励其ノ他家庭内ノ種々相談ニ応ジ以テ不断ノ精神的・張ト計画目的貫徹ニ努メツヽアリ

(十九)其ノ他負債整理ニ関シ他ノ範トナルベキ事項

ナシ


三、組合員ノ負債整理事例

別冊添付


四、特ニ負債整理事業ニ功労アル人物アラハ其ノ事績

組合長 野原 肇氏

10年3月2日 19,505

特定非営利活動法人(NPO) 安房文化遺産フォーラム

旧称:南房総文化財・戦跡保存活用フォーラム(2008年5月に現在の名称に変更)

〒294-0045 千葉県館山市北条1721-1

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