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あとがき
〜癒しの海辺のまちづくりに向けて〜
千葉県館山市は、古くから「癒しの保養地」として、多くの療養者を迎え入れてきた歴史があります。また驚いたことに、数年前の医療圏別平均寿命のデータでは、安房地域の女性が沖縄県を抜いて、全国一の長寿を誇っていました。常春の安房が温暖だから生活しやすいという理由だけではなく、そこには里海と里山を活かして命をつないできた、先人たちの知恵や工夫がつまっているのではないでしょうか。
医食同源の考えに基づいた「身土不二」という言葉があります。私たちの生命(身体)と生きる環境(風土)は一体不可分のものであり、生まれ育ちあるいは暮らす土地でとれた食物を摂取することが望ましいという意味です。
近年、流通や外食産業の発展にともない、日本中、いや世界中どこにいても、同じような食材や料理が簡単に食べられるようになっています。便利な恩恵はあるものの、安房地域固有の食文化はどうなってしまうのでしょうか。健やかな長寿社会を、未来の子どもたちに手渡すことができるのでしょうか。
そこで私たちは、豊かな海の幸に恵まれてきた館山市富崎地区を対象に、伝統的な漁村の家庭料理を調査し、調理実習や料理教室を重ねながら、レシピ集を作成することにいたしました。この事業では、「青木繁《海の幸》誕生の家と記念碑を保存する会」の地域振興活動グループの皆さんが中心となって、富崎地区の各世帯の皆さんや館山市保健推進協議会の皆さんからご協力いただきました。この場で紙面を借りて御礼申し上げます。このささやかな冊子が、「癒しの海辺のまちづくり」実現の一助となりましたら幸いです。
2010年2月
NPO法人安房文化遺産フォーラム
事務局長 池田恵美子