タイトル: | 【房日寄稿】180914-15*ウガンダ訪問記(上・下) |
掲載日時: | %2018年%09月%15日(%AM) %00時%Sep分 |
アドレス: | http://bunka-isan.awa.jp/News/item.php?iid=1225 |
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(房日新聞寄稿2018.9.14-15付)
NPO法人安房文化遺産フォーラム理事 河辺智美
ウガンダは、「アフリカの真珠」といわれるほど美しく自然豊かな国ですが、今なお多くの子どもたちが貧しい状況にあります。旧安房南高校から始まったウガンダ支援活動は、安房高校JRC部を経て、現在は安房西高校JRC部に引き継がれ、24年目を迎えました。
NPO法人安房文化遺産フォーラムとNGOウガンダ意識向上協会(CUFI)が交流の窓口となり、かにた婦人の村や安房・平和の美術展、館山病院健康友の会など多様な市民ネットワークの応援を得ながら、信頼と友情を育んできました。
昨年は、活動の足となる車両が故障したため、クラウドファンディングや新聞などを通じて募金を呼びかけ、約130万円の緊急支援を贈ることができました。多くの方たちの温かい励ましに後押しされ、私たちNPOの3名(鈴木正博・愛沢香苗・河辺智美)は、8月10日から20日までウガンダを訪問してきました。昨年多くの皆さんの支援金により購入したトヨタハイエースの中古車で、ウガンダ国内を約1500キロ走行し、CUFIの活動状況などを視察しました。
「遠い日本からウガンダの子どもたちのことを思い続け、私たちの活動に理解と協力を示してくださり、ありがとうございます。各プロジェクトがうまく進展するよう、メンバーとともにベストを尽くしています」
CUFI代表のスチュアート・センパラさんは、そう述べて、私たちを歓迎してくださいました。
CUFIでは、人びとが希望をもって心豊かに生きられるように、子供たちに教育を与え、コミュニティをサポートしています。センパラさんの息子ソロモンさんを含むスタッフ7人が、生計を立てる仕事に従事しながら、ボランティア活動に力を注いでいます。
その活動分野は、大きく分けて4つあります。「安房南洋裁学校」での裁縫指導、「キタリア小学校」での教育・給食支援、「カウム・トレーニングセンター」での農業指導、「メデ村」での教育・コミュニティ自立支援などに取り組んでいます。安房から送る支援金は、年度ごとに優先順位を決め活動に有効活用されています。
安房からの継続的な支援により、若者の自立を目ざして、安房南と命名された洋裁学校が2001年に設立されています。旧安房南高校で使用されていたミシンをはじめ、教室には机や椅子、トイレなどの環境は整っていますが、現在の生徒数は6名で、電力の不安定など課題が多く、十分に機能しているとは言い難い状況です。
今後は、ビーズを使ったアクセサリーやポシェット、麻袋を利用したカバンなどを作り、日本の安房の皆さんにも喜んでもらえるように、完成度を高めていきたいとのことです。
首都カンパラの近郊にあるキタリア小学校では、ヤギや鶏の飼育、野菜の栽培などをCUFIが指導しています。自給自足で給食が毎日提供されるようになり、子どもたちは調理に必要な薪をもって毎朝登校しています。こうした取り組みは、学校に通う動機づけにもなり、集中力や学力向上につながっているといいます。
ここでは、子どもたちが歌とダンスで大歓迎してくれました。6年生は、「私たちはあなたたちのことを忘れない」というテーマの歌で、とても感動しました。
北部のグル県は、約10年前まで武力紛争により大きな被害を受けていました。なかでもメデ村は、舗装されていない赤土のデコボコ道をひたすら北上したところにあり、茅葺屋根で赤い土壁の丸い家が点在しています。
今でも孤児や出稼ぎで親が不在の家庭が多く、村びとたちがみんなで子どもたちの世話をしています。CUFIでは、定期的に必要な生活物資を届けるとともに、村と学校間の送迎や授業料の支援を続けています。
将来に向け、自生するシアの樹から採取するシアバターの製品化や、色合い豊かな手作りバスケットのクラフト製品などで、経済的な自立を目ざしているとのことです。コミュニティづくりの原点を学ばせていただきました。
コーヒーベルトと呼ばれる赤道直下に位置し、標高が高く昼夜の温度差が大きいウガンダでは、良質なコーヒー豆を栽培することができ、アフリカ第二位の生産量を誇っています。
館山で珈琲焙煎工房カフェポラリスを営なむ鈴木正博さんから、ウガンダ産コーヒー豆をフェアトレードで取り扱い、継続的な支援につなげられないだろうかと提案があり、今回のウガンダ訪問が実現しました。
フェアトレードとは、中間搾取をなくし、開発途上国の生産者から公平な価格で商品を購買し、経済的自立を支援する国際協力の方法です。新しい支援のかたちとして広がる可能性が期待できます。そこで私たちは、CUFIの活動とともにコーヒー農園を視察してきました。
スチュアート・センパラさんは、1994年に日本の栃木県にあるアジア学院に留学し、有機農業の技術を学びました。カウム・トレーニングセンターでは、日本の学びを活かして、環境に負荷をかけない農業を周辺地域の人びとにも指導しています。それは次々世代までも農地を残していくことにもつながります。 ここではマトケやパパイヤ、キャッサバなど様々な農産物が混在して生産されていました。
畑の一部では、ロブスタ種のコーヒーを栽培していました。ウガンダ産コーヒーは、アラビカ種とロブスタ種の2種類があります。ロブスタ種は成長も早く病害に強いのですが、安価でインスタントコーヒーなどに用いられています。一方、アラビカ種は病害に弱く栽培が難しいけれど、風味豊かな高品質なレギュラーコーヒーの原料として人気があります。CUFIでも将来は、アラビカ種の栽培を試みたいと考えています。
今回、ウガンダ産コーヒーのフェアトレードを先行している日本企業の紹介で、東部ムバレ県の農園を視察しました。ここでは希少なアラビカ種を扱い、農薬に頼らない自然栽培にこだわり、有機栽培やフェアトレードの国際認証を受けていました。
小規模農家が集まって1つのグループを作り、生産された豆を集めて、海外に輸出しています。自分たちの生活を豊かにしていこうというビジョンを持ち、常にコーヒーの品質維持に努めています。
ウガンダコーヒーは風味豊かで、自然にも体にもやさしいといわれています。その魅力を広く知っていただきたいと思い、10月を「ウガンダコーヒー月間」と位置づけて、各店舗でウガンダコーヒーの提供やコーヒー豆の販売をおこなうキャンペーンを展開することとしました。10月1日は「国際コーヒーの日」であり、9日は「ウガンダ独立記念日」にあたります。これを記念し、視察した農園のアラビカ種を仕入れて、美味しいウガンダコーヒーを味わっていただきます。
安房地域内の喫茶店などに協力を呼びかけたところ、約20店舗の皆さんが快く賛同してくださいました。地球の裏側の生産者と私たち愛飲者がつながることを通じて、市民交流が深まり、貧しい子どもたちが笑顔で学校に通い続けられるよう、ささやかな力添えになれば幸いです。
これに先立ち、館山病院ギャラリーでは、9月16日から10月7日まで、ウガンダの美しい大自然と活動成果を紹介した写真展を開催します。最終日は、館山病院感謝祭でウガンダ支援バザーをおこない、コーヒーも販売します。ぜひご来場ください。
約10日間の視察では、まだ眠っている資源、これからもっと伸びようとしている芽があちこちで見られました。支援活動とは、裕福な側から貧困な側へ一方的に手を差し伸べるものではありません。むしろ、心豊かに暮らす彼らから学び得るものがたくさんあります。それは、地域に根ざした活動であり、家族のように支えあうコミュニティの姿でした。
近年では、フェアトレードからさらに幅広い「コミュニティトレード」が注目されています。コミュニティトレードとは、環境破壊、地域の過疎化・高齢化、後継者難、伝統的な文化や技術喪失といった多様な地域課題を解決するために、地域の人たちと一緒に事業化していく経済活動のことです。
今後、安房地域とウガンダの両地域の活性化に役立つ商品とその流通、知恵や意見の交流・交換を通じて、コミュニティづくりにつながる国際交流を展開していきたいと願っています。