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(房日新聞2010.3.4付)

守ろう地域医療Ⅱ

看護③〜看護学校閉校=危機感もつ市民グループに動き

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「もしこの学校がなかったら、私が看護師になるチャンスはありませんでした」--。安房看護専門学校をきょう4日に卒業する菅原美恵さん(36)=南房総市在住=は、感慨深げに語った。

離婚し、旧安房医師会病院に職を得て、子どもを育てながらヘルパーとして働いた。30歳の時に転機が訪れる。「看護師にならないか」と、職場の看護師長が声をかけてくれた。

「手に職をつけたい。やってみよう」。館山准看護学校の門を叩いた。2年で准看護師の資格を取得し、看護師にキャリアアップできる安房看護専門学校に進んだ。

両校とも授業は午後から夕方まで。働いて、給料をもらいながら学ぶことができた。夜勤をこなし、少しの仮眠の後に通学するのはつらかったが頑張り抜いた。医師会病院が安房地域医療センターに変わっても、奨学金が引き続き支給された。「学費の心配をしなくてすんだのが、なによりありがたかった」。

館山病院に勤務しながら学ぶ川名教文さん(25)も、この制度に助けられた一人だ。「家は富浦(南房総市)なんですが、母子家庭で弟も2人いる。地元を離れることはできないし、学費を親に頼らないで資格を取りたかった。医療現場で働きながら学んだおかげで、学校だけで学ぶ人よりも実務が身に付いたと思っています」。

菅原さん、川名さんら37期生の9人の卒業と同時に、安房看護専門学校は39年の歴史を閉じる。これまで送り出した看護師は約550人。鴨川市の亀田医療技術専門学校は全日制なので、これで安房地域で働きながら看護師を目指す道はなくなる。

看護師不足が指摘される中、地域で相次ぐ看護学校閉校に危機感を募らせる市民もいる。

「安房の地域医療を考える市民の会」(愛沢伸雄代表)は今月6日、館山市の南総文化ホールで、全国で初めて乳児・高齢者の医療費を無料化した岩手県沢内村の村長の半生を描いた映画「いのちの山河」の上映会を開催。4月に地域医療問題をテーマとしたシンポジウムを行い、8月には市民の声をまとめた「医療ビジョン」を発表したいとしている。

愛沢代表は「亀田の看護大学ができたとしても、地域の看護師不足は解消されない。行政を巻き込んだ取り組みを目指す」と指摘。これまでの市民運動で得た人脈・経験をフルに使って、水面下で新たな看護学校設立の「青写真づくり」を模索している。

政権交代で「民主党が今後、看護師不足対策に本腰を入れる」と期待する機運もある一方、「安房には小児科、産科の病院が少なく、研修施設が確保できない。学校誘致は非現実的」との医療関係者の声もある。

安房医師会で看護専門学校担当の杉本雅樹理事(ファミール産院院長)は「住民が地域医療に関心を持ってくれるのはいいこと。市民グループの声をつぶすような地域ではいけない。どんどんやってほしい」。だが看護学校問題については「病棟のある一般病院と、開業医では意見が異なる。医師会が新たな学校を立ち上げる計画はない」と話した。

金丸謙一・館山市長は2日の議会で、市が「旧安房南高跡地に県立の看護学校設置を」と県に要望していることを唐突に表明。議員や医療関係者、市民グループらを驚かせた。だが、金丸市長がこの問題で今後リーダーシップを発揮していくのかどうかは、現段階では不明だ。

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映画「いのちの山河」上映会の詳細はこちら

10年3月4日 5,331

特定非営利活動法人(NPO) 安房文化遺産フォーラム

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