館山市(千葉)は船中、軍事要塞化された
有事法制の危険、戦跡が告発
花作りは禁止、無数の地下壕
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千葉県房総半島の先端に位置する館山市は戦争中、「帝都防衛」の最重要拠点として軍事要さい化された地域です。その戦跡の発掘や保存、ガイドをライフワークとして取り組む高校教師の愛沢伸雄さん(50)=安房歴史教育者協議会世話人=は、「これらの戦跡は、有事法制の危険性を告発しています」と訪れる人たちに語っています。
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調査・保存にとりくむ教師・愛沢伸雄さん語る
海と花畑で知られる館山市。一方で、市内には館山海軍航空基地や砲術学校の各施設、砲台、水中・水上特攻基地、本土決戦に備えた地下ごうなど、無数の戦跡が残されています。
十年前から戦跡の調査や保存活動を生徒たちといっしょにすすめてきた愛沢さんは「最近、戦跡をめぐるツアーの希望も殺到しているんです」と笑います。三月十九日には、婦人民主クラブ(再建)東京協議会の女性約四十人が訪れました。
一行が訪れたのは、館山海軍航空基地跡に隣接する「赤山」地下航空要さい跡と、戦争末期に掘られた「一二八高地抵抗拠点地下ごう」。岩山に無数のトンネルを張り巡らせた赤山地下要さいは、司令部、武器庫などに使用されたといいます。
「館山海軍航空基地は中国爆撃を担った侵略の中心。地下ごうは本土決戦の拠点で、天皇や大本営を松代(長野県)に移すまでの“捨て石”だった場所です。降伏が数週間遅かったら、沖縄と同じ悲劇が起こったかもしれません」と、地下ごうのなかで解説する愛沢さん。参加者からも「身近な千葉に、こんなに大きな地下ごうがあるとは…」とため息がもれます。
こうした戦跡の実態が長い間埋もれてきたのには理由があります。要さい周辺は、憲兵や特高警察のきびしい監視下におかれました。また、住民が住民を監視する体制も築かれ、ものをいえない土地にしてしまったのです。「戦争の準備とはそういうものです。国民の目と口をふさぎ、総動員していく有事法制とまったく同じです」と愛沢さんは語ります。
戦争の犠牲は特産の花にもおよびました。全国でも有名な房総の花畑も、三八年の「国家総動員法」を受けて栽培が禁止されました。植えれば「非国民」。「取り締まりはきびしく、青年団が納屋を調べて歩いたそうです。しかし、抵抗する農民がひそかに山奥で栽培し、命がけで苗や種を現在に伝えたのです」
愛沢さんはいいました。「戦前の過ちを二度と繰り返してはいけません。有事法制を阻止するためには『知ること』が大切です。戦争のとき自分たちの地域がどうだったのか学ぶことで、地に足がついたたたかいができると思うのです」
参加した婦人民主クラブ(再建)の伊藤正子さん(86)は「私も夫を戦争で失うなど大変な思いをしてきた一人として、有事法制は絶対許せないという思いを強くしました。今日聞いた話を、ぜひ周囲の人に伝えたい」と語っていました。
(写真)館山海軍航空基地「赤山」地下要さい跡で婦人民主クラブ(再建)の人たちに説明する愛沢伸雄さん(中央)=19日、千葉県館山市
小6が地元で集めた宝物
館山の池田匠君
宝貝をオリジナル図鑑を
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館山市長須賀の池田匠君(11)=北条小6年=が、同市を中心とした海岸で拾い集めたタカラガイのコレクションをまとめたガイドブック『館山のタカラガイ図鑑』を発行した。南房総で見つけることが可能なおよそ50種類のうち36種類を掲載。「この図鑑を手に収拾を楽しんでもらえれば」と池田君。
丸みを帯びた卵のような形状が特徴のタカラガイ。池田君が魅せられたのは、小学2年生の時に参加したイベントがきっかけ。海辺で活動するNPOや収集家から「タカラガイの形から貝という漢字ができたことや、世界で200種類があり館山周辺では50種類ほどが拾える」ことを教えてもらい「ワクワクして興味がわいた」。
そして父の保之さんら家族の協力で本格的な収拾活動をスタート。一時は、週末になると市内から南房総一帯の海岸に足を運び、夢中になって海岸に打ち上げられたタカラガイを探し歩いたという。
これまで集めたコレクションは36種類。中には巻貝のような形態が現れた、収拾マニア垂涎の貴重な変型フリークもある。北条小が実践している「マイプラン」と呼ばれる個人の自由研究でもテーマにしており、今でも自他ともに認める立派なタカラガイコレクターだ。
そんな池田君が不便に思っていたのが、ガイドブックがないこと。「世界中のタカラガイを紹介する本格的な図鑑ではなく、持ち運びができて、館山周辺の種類は一目でわかるものがあれば」と考えた。
◇NPOがガイドブックに仕上げる
インターネットのアルバム作成サイトを使い、全コレクションをまとめて、全20冊をつくってみたところ、コレクターやNPO法jん安房文化遺産フォーラムが高く評価。同NPOが版権を譲り受け、ローカルなガイドブックに仕上げた。
「集めたタカラガイは僕の宝物。出版してもらい小学校生活の記念になった。海岸でこの図鑑を持った人と会えたらうれしいです」と池田君。
「今度は生きたタカラガイの飼育や違う種類の貝の収拾にも挑戦しようかな」と夢を膨らませている。
A6判、64ページのポケットサイズ。カラー写真と簡単な解説で36種類のタカラガイと2つの変形フリーク、そのほかの貝やイルカの耳骨の化石なども紹介している。600円で宮沢書店と松田屋書店で販売。
(房日新聞2010.7.30付)
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