タイトル: | 2010・4・18鈴木寛文部科学副大臣宛「要望書」 |
掲載日時: | %2010年%04月%18日(%PM) %23時%Apr分 |
アドレス: | http://bunka-isan.awa.jp/About/item.php?iid=517 |
平成22年4月18日
鈴木寛文部科学副大臣 殿
安房の地域医療を考える市民の会代表
愛沢 伸雄
要 請 書
私たち「安房の地域医療を考える市民の会(代表 愛沢伸雄)は、一昨年の秋、看護学校の閉校に関わって、南房総・安房地域にある館山市・鴨川市・南房総市・安房郡鋸南町の3市1町の市民たちが、安房の地域医療について市民レベルにおいて何ができるかことを話し合うために結成されました。
安房地域は安房医師会が40年近く取り組んで生きた総合検診などによって、長寿社会をつくってきました。だが現実は、過疎化と急速な高齢化に直面した、いわゆる「限界集落」を多数かかえた地域です。そのなかにあって地域医療の核になる国立や県立、あるいは市立などの公立病院はありませんが、幸いなことに医療法人鉄蕉会(亀田隆明理事長)や社会福祉法人太陽会(亀田信介理事長)など、3次救急医療や高度医療などを担っている基幹病院があります。亀田医療グループが核になって、地域の病院や福祉・介護施設などと連携していく体制がつくられつつあり、他の過疎地域の医療状況に比べると極めて恵まれています。
そこで、私たちは、この恵まれた条件を生かして
(1) 地域医療の充実(当面の目標)を図る。
(2) 現在の医療資産を活用して地域経済の活性化(中・長期目標)につなげる。以上、この2点について副大臣のご理解を賜り、そこから浮かび上がってくる地域医療の問題点に関して、私たちの要望を聞いていただきたいと思っております。
まず、(1)ですが、医療法人鉄蕉会の医療グループは、鴨川市の亀田メディカルセンターを中心に、館山市の亀田ファミリークリニック館山や社会福祉法人太陽会安房地域医療センターがあり、グループ内では、医師約400人を効率的に配置し、それぞれの医療施設の役割を引き出しながら、救急医療や高度医療などの体制を充実させ、地域医療における住民のニーズに応えています。安房地域においては、いわゆる「公的病院」としての役割を十二分に果たしていると思います。その結果、安房地域では、医師不足から公立病院が閉鎖に追い込まれた銚子市のような地域医療の崩壊を経験せずに済んできました。
だが、いま地域医療において危機な状況に直面しています。それは地域の病院において慢性的に看護師不足がおこっていることです。全国的に見ても極めて高い水準で高齢化が進んでいるのが千葉県ですが、そのなかでもとくに高齢社会の先進地域が南房総・安房地域です。そればかりか、人口当たりの看護師指数が全国のなかで最下位グループに位置しているのが千葉県であり、その指数が千葉県のなかで低水準に置かれているのが安房地域です。
この地域にあって医療法人鉄蕉会亀田総合病院(亀田信介院長)は、全国に名を知られた病院であり、十分な数の医師を確保することができても、実は病床に見合った必要な数の看護師が確保できていない現状にあるといいます。亀田医療グループでは、多数の入院希望者がいるにもかかわらず、一部病棟が閉鎖されていると聞きます。看護師さえ確保されれば、すぐにでも病棟の運用が可能で待機患者たちに応えることができます。実は他の病院にも同じような状況で、高齢化が進んでいるだけでなく、都市部からの退職移住者が増えており、その人たちを含めて現在の地域医療の現状に不安を募らせています。たとえば、昨年末館山市が総合計画策定のためにおこなった住民意識アンケートを見ると、まちづくりの施策で一番望んでいることは「医療の充実」であり、市民の半分がそのことを要望しています。
看護師不足がもたらしていることでの地域医療への不安は、着実に広がっています。亀田総合病院の亀田信介院長は、必要な看護師の数さえ確保できれば、救急医療をはじめ入院患者の処置について他の医療機関との連携をもって、すぐにでも住民のニーズに応えられるといいます。このことでは安房地域において、長年安房医師会が中心となって取り組んできた総合検診などを安定的に継続できるだけでなく、地域にある福祉・介護分野の医療従事者の雇用をも生み出していく契機になっていくと思います。昨今の雇用状況の悪化と、長期間冷え込んできた地域経済にインパクを与えるはずです。
ところが、昨年春に館山市の民間病院が長年、独自に運営してきた准看護学校が閉校し、また安房医師会付属の看護学校も資金難のなかで、この春卒業生を送り出し閉校になりました。南房総・安房地域は、国立や県立などの公立の病院や看護学校がひとつもなく、県全域から見ても地域医療がアンバランスで、その状況を解消して欲しいと願っています。
具体的には、館山市において、看護師養成の公立学校、あるいはそれに代わる養成施設をつくってもらいたいのです。
前述したように看護師不足は、亀田医療グループ以外の病院や医院にとって、さらに深刻な問題になっています。このため私たち市民の会では、地域に住む市民だけではなく、安房医師会宮川準会長・亀田総合病院亀田信介院長・館山病院大島博幸総長をはじめの地域医療に直接たずさわる医師や看護師などの医療従事者たちとともに、地域医療や看護師問題についての勉強会を度々開催してきました。また、安房医師会の後援をいただき、市民や医療従事者に呼びかけて、地域医療を考える映画会を開催した際には、1000名を大きく超える人びとが集いました。
このような機会をつくりながら、当面の看護師不足をどうしたら良いのか、またそのなかで私たち市民に何ができるかなどを話し合ってきました。
今回開催された「地域における医療者育成を考えるシンポジウム〜目指せ 健康長寿 日本一」にも、私たちの市民の会は、後援団体のひとつとして名前を連ねさせていただいています。
また、鴨川市に開設が予定されている 学校法人鉄蕉館(亀田省吾理事長) 「(仮称)亀田医療大学」は看護師不足のなかにあって、これまでの亀田医療技術専門学校の存在とともに、地域医療の充実のための新設校として、大きな期待をいだいております。安房地域の基幹病院である医療法人鉄焦会とともに、地域医療の崩壊を防ぐために看護師不足を解消しようと懸命に努力されている学校法人鉄焦館に対して、市民の立場からできる限り応援をしていきたいと思っております。
次に(2)についてですが、医療法人鉄蕉会亀田メディカルセンターは、財政規模で鴨川市の予算規模を大幅に上回り、医療従事者規模においても世界的な企業である新日鐵君津製鉄所を上回っています。このことを見ても地域産業や雇用の面で、医療分野がもっている経済力は強く、その分野での地域差がないだけでなく、公的な貢献度が高い仕事です。
ところで首都圏から近い南房総・安房地域は、温暖で自然環境もよく老後を過ごしやすいといいます。そのため首都圏からの退職移住者が増加していますが、そのうえで医療が充実しているとなれば、大きな地域ブランドになります。地域医療が充実していることは、この地域のまちづくりにおいて極めて重要な施策であり、市民の要望も最も多いものです。
医療に関わる雇用を増やすことと、交流人口や移住者を増やすこととは、施策上においても連動していることになります。私たちはそこに着目しています。医療の充実のためには、どうしても看護師不足を解消する必要があります。移住者たちの医療ニーズに応えられる地域になれば、首都圏から多くの移住者を迎えられるはずです。あるいは福祉・介護の施設もたくさんでき、福祉や医療従事者などの雇用が高まっていくはずです。以上は中期目標です。
次に、長期目標ですが、医療法人鉄蕉会亀田メディカルセンターのような大きな医療施設が、なぜ安房地域のような過疎地に存在してきたのでしょうか。そこには医療法人鉄蕉会の創業者から今日まで、奇跡的ともいえる血のにじむような努力が払われてきたのではないかと想起しています。
私たちには、病院経営に関する専門知識はもとよりありませんが、亀田メディカルセンターには、救急医療や高度医療に関わる専門性の高い医者が存在するため、首都圏はもとより全国から、あるいは海外からさまざまな疾患に悩んでいる患者が集まってくるといいます。それは病院経営にとって大きな収入をもたらし、浮き沈みの激しい病院経営のなかにあって、これまでの亀田医療グループの経営を支え、安定させてきたと聞いています。
ならば、救急医療や高度医療に関わる専門病院としての知名度が極めて高く、その大きな医療ブランドである亀田メディカルセンターの存在を地域経済の活性化の目玉にできないでしょうか。昨年、亀田メディカルセンターは、日本で最初に「JCI」という国際的医療評価機関から認証を受けたと聞きました。医療分野での高い評価は、「豊かな自然環境をもっている安房」と「信頼できる亀田メディカルセンターをもっている安房」とが相まって、安房地域において地域医療リゾート構想は極めて魅力ある施策になっていくものといえます。
かつて館山湾周辺は、安房地域の入口であり明治期より東京からの汽船の就航で、転地療養や避暑避寒としての保養地でした。有名な芸術家や学者、実業家などが数多く訪れるだけでなく、東京に居住する人たちの別荘が多数あったといいます。いまはグローバリゼーションの時代です。遠く海外も視野に入れた雄大な構想のもとに、安房地域の活性化を図りたいものと、大きな夢を抱いています。
是非とも、副大臣のご理解と応援をお願いいたします。
愛沢 伸雄
NPO法人 安房文化遺産フォーラム 代表
安房の地域医療を考える市民の会 代表
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TEL:0470(22)8271 Eメール:awabunka@awa.or.jp